歯車
20代前半
私は自意識とコンプレックスの塊だった
学歴 一般常識 趣味 容姿 性格…
どれも自信がなく
自分というものさえ あやふやで
よくわからなかった
仲の良かった同期と私が似ているらしく
よく間違われ
「ふたご」と言われた
その子の方がずっと可愛くて
チャーミングで
賢かった
比べられるのが嫌だった
けれど自分でも比べていた
何人かの人を好きになったり
好きになられたりした
8年間の女子校生活の
影響もあるのだろう
どうしたらいいのかわからず
うまくいかなかった
仕事や 友人や 時間に
流されるばかりの
空っぽな私には
恋愛にしろ 友情にしろ
密度の濃い人間関係は築けなかった
足の傷も誰にも知られたくなかった
見た目は賑やかに
楽しそうにしていた
ランチルームで
同期とくだらない話で
盛り上がっている時
おもしろくて実のない話をするのが
上手いねと言われた
職場の向かいの席に
トトロのように体の大きな男性がいた
穏やかで 多くは語らず
豪快に笑う 達観した人だった
「空回りしてるね」
その人は言った
その瞬間私の脳裏に
真っ暗な空間にぽつんと浮かぶ
大きな歯車のイメージが現われた
何にも 誰とも
かみ合うことのない歯車
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