再手術
火傷の傷は
しだいに重い足かせとなった
身体が大きくなると
移植した皮膚が突っ張り
足の指が持ち上がった
短大入学
友人とテニスサークルに入った
可哀想ねと遠くの声が聞こえた
女の子たちのすらりと伸びた
きれいな足がうらやましかった
スコートは履けなくなった
ベッドで泣く私に母が寄り添った
しばらく泣いて顔を上げると
母も泣いていた
初めて見る母の涙だった
短大2年の夏休み
縮んだ足指を伸ばすため
左鼠径部から
皮膚を移植する手術をした
ひざから足甲まで覆う
ギプスがはめられ
病室のベッドの上から吊られた
右となりのベッドには
交通事故で骨折した30代の女性がいた
小学生と幼稚園の男の子がいて
夫婦で小学校の先生だった
お互いベッドから動けないので
いろいろと話をした
年賀状だけ送り合って
おばあさんになったら
温泉に行こうという約束をした
車椅子に乗れるようになると
車椅子仲間ができて
病院内をあちこち探検した
病院の玄関に
夜泣きラーメンの屋台が来て
何度か食べに行った
屋上のひとつ下の階は
エレベータの向かいが霊安室だった
押したつもりはないのに
時々開くことがあり
病室では怪談話で盛り上がった
ある日
ひとりでエレベータに乗ると
霊安室の奥にろうそくが灯っていて
病室に逃げ帰った
入院生活は案外楽しかった
短大の友人数人が
見舞いに来てくれた
ギプスから覗く足先を見て
顔色を変え
言葉少なく早々に帰った
手術の詳細は母が聞いたのだろう
私は自分の足がどうなっているのか
知らなかった
電動のこぎりでギプスを切る時は
足も切れそうで冷や汗が出た
ギプスから解放されたふくらはぎは
棒のように細くなっていた
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