傷跡
診察室で包帯を取ると
足の甲に移植した皮膚は
真っ黒だった
縮んだ筋を伸ばすため
親指から小指まで1本ずつ
骨に添うように指先から
長い針金が打ち込まれ
トウシューズで爪先立ちをするような
形に伸ばされていた
ショックだった
友人たちが青ざめて帰った理由が分かった
車椅子で屋上に行き泣いた
足指から針金を抜くとき
麻酔はかけられなかった
長さ8cmはある太い針金を
それぞれの足指から
ただ引き抜くのだ
肉が引きずり出されるようで
激痛に叫ばずにはいられなかった
退院の日から数日の間
体重をかけると
ナイフで刺すように足の裏が痛んだ
だんだんと歩けるようになると
ふくらはぎの筋肉も戻った
傷跡に傷つき
就職も恋愛も結婚も
どうでもいいと投げやりになった
それでも短大に戻り
内定を受けている友人たちの話に
刺激を受け
就職活動を始めた
出遅れてなかなか決まらず
結局母のつてのある会社に
入れてもらえることになった
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