ダブルインカム ウイズ ドッグ
ふたりの生活がはじまった
27年間の
それぞれの生活をひとつにするには
日々攻防があった
けれど週末ごとに
結婚式でお世話になった友人たちを招き
ギクシャクしながらも
賑やかにすごしていた
三宅島に潜りに行った
小さな民宿で居場所は部屋しかなかった
夜8時
彼は部屋を真っ暗にして寝てしまった
宵っ張りな私は本が読みたくて
声をかけるとひどく不機嫌
灯をつけることは許されず
何もすることがなく
寂しかった
その年の夏
叔母の家で生まれた
ゴールデンリトリバーの雌が
私たちの仲間になった
海の波から「なみ」と名づけた
なみの存在が夫婦の緩衝材になった
ふたりで働いていたので生活は豊かだった
スキューバダイビングをしに
国内外を旅行した
普段の週末は乗馬クラブに通った
表面的にはふたりの生活は楽しかった
けれど
君から得るものは何もない
結婚式よりテニスで勝ったときのほうが
嬉しかった
言葉がコンプレックスと混ざり合って
ずっと私の底にあり気持ちも揺らいだ
私は
彼にとってふさわしくないのではないか
彼は
私のことを愛しているのだろうか
私は
彼と結婚したかったのだろうか
ずっと先になって分かるのだが
私は「結婚」がしたかったのだと思う
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