貫く
夫は短気だった
ささいな事でたくさんけんかをした
けんかと言っても
言い合いにはならない
私は言いたいことがすぐ言えないのだ
夫の不満は口撃で始まる
黙って聞く
よく考える
考えて 非があれば謝る
是と思えば ようすをみて
ぽつりぽつり話すか 文章にして渡す
私の不満は ちょっとずつ溜まる
もやもやしてくると
よく考える
考えて ようすをみて
ぽつりぽつり話すか 文章にして渡す
私の言葉に 夫は怒りで返す
勢いで出た言葉には一貫性がない
だんだん言ってることがおかしくなってくる
私は 考えてから言葉にするので
一貫性がある
最後まで冷静に言い切る
余すことなく言い切る
夫は気持ちが落ち着くと
聞けるようになる
急に態度が軟化し
会話らしい会話になり
謝ってくれる
私は気長だが 気弱ではない
そんなやりとりの繰り返しを
何年もずっと続けてきた
夫には貫く芯がなかった
理想や目標もなかった
場当たり的な言葉が多く
だから意見がすぐに変わり
最後は責任といっしょに丸投げしてくる
反省はしない
その時そう思ったのだから
それが正しいことなんだ
と夫は言った
言った本人にとって
その時の正直な気持ちなのだろう
しかし自分の言葉に責任を持っていない
聞き手がそれを
どう受け止めるかの配慮はない
子どもが生まれたら
意見が食い違うことばかりだろうと思った
子育てについては
私のやりかたを貫き通す
絶対に曲げないと心に決めた
私は気長だが 強情だ
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ディベート(討論)は、
話す前と後で
考えが変わったほうが負け。
ダイアローグ(対話)は、
話す前と後で
考えが変わってなければ意味がない。
平田オリザ
朝日新聞 2018.2.20
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高橋源一郎 明治学院大学・高橋ゼミの方針
「論破禁止」
誰かを論破しようとしている時の
人間の顔つきは、
自分の正しさに酔っているみたいで、
すごく卑しい感じがするから。
対話は、それをつうじて
各人が自分を超えることを
希ってなされる。
相手へのリスペクト(敬意)と
自己へのサスペクト(疑念)がなければ
成り立たない。
朝日新聞 2018.2.19
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