独立
夫が
会社を辞めて独立すると言った
我慢して家族のために働くことはできない
子どもよりも自分がしたいことの方が大切だ
我慢している姿より
やりたいことをやっている姿を
子どもに見せたいと
今の仕事は
彼が選んできた「したいこと」だったはずだ
その選んできた仕事の重圧で
子どもの泣き声にイラつき声を荒げた
勝算はあるんだ
たくさん儲けて早く引退する夢を語る
私はそれを一緒に夢描くことは
できなかった
上司の独立に乗ったのだが
「友人と立ち上げる」と自分の親には話す
資金計画が甘いのではないかと指摘すると
キレて
「家も金も何もかもお前たちにくれてやる」
と怒鳴った
離婚するってこと?と問うと
「価値観の違い どうしようもないよね」
と背を向けて出かける
彼の言葉が最終的な決断でないことは
分かっていたが
考えなければと思った
南美紀子が新聞のコラムに自分の子育てを
「有事」と書いていた
ひとりの子育てが有事なら
双子は「一大事」だ
子どもを育てているときは
人間だって動物の本能で
守りの態勢にはいるだろう
生活が不安定になることに
抵抗を感じないわけはない
双子が生まれて
私にとって一番大変な時だった
つぎは私自身が病気になるときだろう
私が疲れたようすでいると
自分だって大変なんだと
ますます不機嫌になる
きっとつぎでも
夫は変わらないだろう
上司が準備した都心にある
レンタルオフィスは
ホテルのように綺麗だった
夫の帰りは遅くなった
私は何も言わなかった
あれから3か月が経った
夫は憔悴し
風邪で寝こむこともしばしば
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