あれもこれも痛い

陣痛と胎児が出るのは痛いけれど

切るのと 縫うのはどうってことない

と言う人もいるが

会陰を切るのは痛かった

ひとり目はもちろん痛かった

ふたり目も 胎盤を出すのも

できたばかりの傷口に塩を擦るように

悲しくなるほど痛かった

陣痛から出産まで6時間48分

スピードについていけなかった

膣の裂傷はひどく

縫合はひと針ひと針が絶えがたかった

時間も長くかかり

助産師の手を握りしめ

縫っている若い女性の医師に

「まだですか まだですか

 痛い 痛い 痛いよー」と言い続け

その度に医師は「もうすこしですよ、

もうすこしですよ」と優しい声で言い続けた

その病院のスタッフは皆

常に優しく肯定的な言葉をかけてくれる

本当はこの医師は「静かにしろ」

と言いたかっただろう

後日の検診で 「甘え上手ですからね」と

やんわりと言われた



「過去形」

病室のベッドに戻ったのは

14時頃だったろうか

看護師が血液や汗で汚れた体を

拭いてくれる

乳首をマッサージされると

オレンジの液体がにじみ出し驚いた

初乳だ!

産んだとたんに出るなんて

ホルモンの力というのはすごい

子宮収縮の点滴が打たれ

子宮がひどく痛む

ずっと夫の手を握り

痛い痛いと言い続ける

1時間ほど経って

痛かった痛かったと言っていると

「過去形になったね」と夫が言った



「長男と次男」

後から伝えられたのだが

陸はへその緒が首に巻きつき

産道で心拍が落ちてしまったそうだ

思えばその時

私は酸素マスクをつけられた

あの時の産み出すことへのためらいに

罪悪感を覚えた

産まれるということは死ぬよりも苦しいと

聞いたことがある

それを誰が体験し語ったか知らないが

ともかくきっとすごく苦しいのだろう

陸は2482gという通常より小さな体だ

それだけ体力も弱い

海も2382gと小さいが

6分前に開通したての道をするりと抜け

大きな産声をあげて産まれた

長男次男の性格の違いは

きっと産道を通る時に形成されるのだ

長男は 未踏の道を苦労して突破し

次男は苦労少なく通り抜ける

青空通信

双子の子育てや離婚、自分の成長、 他の方々から頂いた言葉、 出会った言葉を綴っています。

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