出産
分娩台に移動すると
もういきんでいいよと
ほっとした
何度いきんだかわからない
こんなに痛いのだから
すぐでてくるのだと思っていた
500円玉くらい頭が見えてきましたよ
と言われてからも何度いきんだろうか
会陰が切られる痛みが走る
何度いきんでも遅々として進まない
「もうすぐだよ 大丈夫だよ」と
立ちあっていた夫の声が頭上から聞こえるが
大丈夫なんかじゃないと腹が立った
早く終わって欲しかったが
頭が出て 次に体というときに
その大きさに一瞬ためらった
圧迫感など通り越している
破壊されてしまう!
あまりの痛みに絶望さえ感じた
叫びながらありったけの力でいきむ
裂かれるような激痛の後
第一子が生まれた
壊れた 人間としてダメになったと思った
「陸と海」
「人間が出てきた!」
当然人間以外であるはずがないのだが
そう思った
のちに陸と名のつく第一子
大きな病気もなくきたせいか
自分の体について深く考えたことはなかった
妊娠中は仕事も忙しく
どこか絵空事で
「ここに人間がいる」
という実感は湧かなかった
白っぽい紫がかった肌
ドラマのように「元気な男の子ですよ」と
看護婦さんがかかげて
見せてくれることもなく
処置のために視界から出て行ってしまった
泣き声もよく覚えていない
が そう思ったのは
産後2・3日たってからのこと
ひとりが出たら次!だ
ふたり目は陣痛が弱まってしまうので
体力のあるうちに
自分から陣痛の波に乗って
頑張って産み出してくださいと言われた
たしかにひとり目のときの
こらえきれない感覚はない
比較的冷静に陣痛をとらえることができ
6分後
医師が腹を押すのを助けに
第二子が産まれた
のちの海だ
「おんなじのが出てきた・・」と思った
海は大きな産声をあげた
1999年11月6日の土曜日の朝は
雲ひとつない秋晴れだった
陸 午前11時42分 2482g 46㎝
海 午前11時48分 2382g 46㎝
わたしの体からふたつの命が生まれた
「名前」
陸と海で地球
じぶんと かぞくだけではなく
ほかのひとや どうぶつ
しぜんの きょう あした みらいを
たいせつに できるひとでいてほしい
私たちの遺伝子中の窒素も
歯の中のカルシウムも
血液中の鉄も
かつて収縮した恒星の内部で作られた
私たちの体は
はすべて星の物質でできている
私たちは極めて深い意味において
「星の子」なのです
カール・セーガン 天文学者
The nitrogen in our DNA,
the calcium in our teeth, the iron in our blood,
the carbon in our apple pies were made
in the interiors of collapsing stars.
We are made of star stuff.
Carl Sagan Astronomer
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