グレープフルーツの木
小学2年の頃
陸は 給食で出た
グレープフルーツの種を植えた
芽が出て
小さな木になった
アゲハチョウの卵がつき
木は毎年丸裸になった
アオムシは飼育ケースに入れ
公園のミカンの木から
葉をとって育てた
アオムシは パリパリと
小さな音をたてて葉っぱを食べる
葉っぱは
どんどんちいさくなっていく
何度葉に戻しても
落ちてしまうアオムシもいる
落ちても落ちても
何日も生きていることもある
触れると 動く
命の脆さ 強さ 重さ
見ているのは苦しい
人にも
あっけなく散っていく命も
粘り強い命もある
10歳の頃
日曜日の朝に
父が私の上に倒れてきた
ふざけているのかと思ったが
抜け出して見た父は
口から泡を吹き
白目を剥いていた
それから父は幾度も倒れ
入退院を繰り返した
現在も病と共存しながら
粘り強く生きる
アオムシはまるまるふとって
ある日 水様の便をすると
枝から離れて
気に入ったところで糸を吐き
体を固定する
アオムシは脱皮して
やわらかいサナギになる
つなぎの服を脱ぐように
アオムシ柄の皮は
おしりのあたりでくちゃくちゃになって
ぽいと捨てられる
蝶になるには サナギの中で
ドロドロになるというのだから
不思議だ
サナギはだんだん透けてきて
アゲハの模様が見え始め
羽化する
何度見ても感動的だ
ある年に育てたアオムシは
なかなかサナギにならず
たくさん食べ 大きくなった
サナギになっても
ビクビク動く
ある日 サナギが真っ黒になった
腐った!
と思っていたら
クロアゲハが出てきた
驚いたけれど
素晴らしく美しかった
陸のグレープフルーツの木は大きくなり
たくさんアオムシがついても
葉がなくなることはもうない
0コメント