孤独 エーリッヒ・フロム
人間は誕生と同時に、
本能が支配する明確な世界から、
不明確で、不安定で開かれた世界へと
投げ出される。
確かなのは過去についてだけで、
将来について
確かなことといったら、
死ぬということだけだ。
孤立こそがあらゆる不安の源なのだ。
恋に「落ちる」という最初の体験と、
愛している、あるいは
もっとうまく表現すれば
愛のなかに「とどまっている」
という持続的な状態とを、
混同していることである。
親しくなるにつれ、
親密さから
奇跡めいたところがなくなり、
やがて反感、失望、倦怠が
最初の興奮のなごりを
消し去ってしまう。
しかし、最初はふたりとも
そんなことは夢にも思わず、
たがいに夢中になった状態、
頭に血がのぼった状態を、
愛の強さの証拠だと思い込む。
だが、じつはそれは、
それまで二人が
どれほど孤独であったかを
示しているにすぎないかもしれないのだ。
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