2018.08.29 11:29物語9 「一歩」あとがきももさんとわたしのメールもも:読んだよ。 コーヒーなんていらないくらい、一気に。 れいも読んでた。 ほとんど自分の力で読んでいた。 そして、読み終わった途端、吸い込まれるように寝た。わたし:自力で読むなんてすごいね。 読み聞かせたって分からないよなって思いながら書いたんだよ。 でも、今分からなくてもいいと思ったんだ。じわっと沁み込んで、い...
2018.08.22 11:39物語8 Mare の 一歩 (3)いろいろな人のドアを開けました。一度開いたドアがまた閉じてしまうこともありました。何度も開いて、何度も閉じた鍵穴は、傷ついて、光も弱く、なかなか開けることができません。人によっては、12のうちのひとつのドアも開くことなく、鍵穴のほとんどが埋まって見えなくなっていることもありました。可哀想なその人が、疲れて眠るたび、ボロボロの鍵穴に鍵を入れ...
2018.08.15 11:55物語7 Mare の 一歩 (2)私は、私に気づいてからも、動くことはできませんでした。体は 砂が詰まったように重く、向きを変えるのがやっとでした。木の上からずっと空や子どもたちを見て過ごしました。子どもたちからたくさんの幸せをもらいました。気がつけば、悲しい気持ちは消えていました。あなたが6歳になって他の子どもたちと一緒に卒園する日、私は涙が止りませんでした。私の涙は空...
2018.08.08 03:05物語6 Mare の 一歩 (1)れいちゃんへはじめまして。私はマーレ、幼稚園の桜の木に住んでいる妖精です。週に1度、あなたが幼稚園にくるのをとても楽しみにしています。私は、少し前まで、ずっと動かずに空を見ていました。いいえ、本当は動かないでいることも、空を見ていることも、知らず、ただ目を開けていました。いつからそうしていたのかも思い出せないけれど、ずっとずっと動かず、音...
2018.08.01 11:32物語5 「家」あとがき2006年5月。妖精から一通目の手紙を受け取るとすぐに、海は、ピアノの成り立ちの絵本を本棚から出してきて、テーブルに広げ、毎日一ページずつ、妖精のためにページをめくった。ふたりは、下の乳歯が抜けたあとに2本永久歯が生え、それからしばらくは、どちらも歯が抜けることはなく、それでもときどきサリーナの話をした。初秋、二通目の手紙に書きたいことが...