アラスカと家と

1999年早春 結婚6年目のころ

私たち夫婦は 5歳の雌の

ゴールデンレトリバーのなみと暮らし

スキューバーダイビング、

乗馬、キャンプと

毎年盛り沢山に楽しんでいた


私たちの生活は 豊かだったけれど

私は「加速している」と

感じるようになっていた

お金と時間を消費しているだけで

積み上げていない

心の奥に罪悪感を 抱いていた


今年の夏はアラスカへ行こう!

17日間の長旅の計画だった

同時進行で家の購入の話が浮上した

近所でよさそうな物件があった

私の実家から歩いて5分の近さだった

南道路に面する 南北に細長い3階建ての4LDK

4人家族の想定で作られた家だった

夫婦と犬とで住むつもりなので 部屋は余る

1階の洋室は私の趣味の部屋にしよう!


4月2日 生理がこないのが気になった

仕事 乗馬 アラスカ 家

忙しく 沸き立って

精神的に不安定だったからだろうと結論した


遊び半分で妊娠検査薬を買った

おみくじくらいの軽い気持ちで

判定結果が出る部分を

手で隠しながら待った


ぱっと手をどけると

くっきりと紫色の線が一本出ていた

数分間 その紫の線に釘付けになった

精神不安定の根は妊娠だった

夏のアラスカはどうなるのだ


夜 帰宅した夫が堰を切ったように

アラスカの話を始めるのをさえぎって

「まぁそこにすわりたまえ」と

テーブルに向かい合って座り

「家族が増えるようです」と告げた

夫は絶句した


いつまでも海だ山だと

飛び回っている私が妊娠するなんて

家族の誰もが考えていなかった

母に一緒に病院に行って欲しいと言ったら

「どこが悪いの?」と聞かれ

父と長兄に「子どもができた」と言ったら

「どこにできたの?」と言われ

「ここだ!」と自分のおなかを指差した


4月3日 母と近所の病院に行った

2ヶ月目に入ったところで

胎児は3ミリです

双子のようにも見えますが

消えてしまうことがありますから

と医師は言った


本当に子どもができたことが

確実となった事に頭がいっぱいで

後半の双子説などは

右から左に抜けていった

アラスカ旅行は前半は陸上だが

後半は海上だ

安定期とはいえ船で寝泊まりする

万一の事態には同行者皆に迷惑がかかる

後半はあきらめることにした

青空通信

双子の子育てや離婚、自分の成長、 他の方々から頂いた言葉、 出会った言葉を綴っています。

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