手当

昼食後 名前が決まり

夫は出生届を出しに行った

しばらくすると

子宮の痛みとともに胃が痛みはじめた

胃痛は起きていられないほどひどくなり

くの字になって苦しんでいるところへ

母が友人を連れて見舞いに来た

絶え絶えに一言二言話すのがやっとだし

こどもたちには両親以外は間近で会えないし

申し訳なかった


母が残り 背中をさすってくれる

手の温かみというのは弱る体に

なんてやさしいものだろう

母のぬくもりに

33歳の私は子どもに戻ったようだ

目を閉じて私もふたりを癒せるような

母になりたいなぁと考えていた

しばらくすると痛みは止んだ

手当てってこういうことから

言い始めたんだろうねと母と話す


15時の授乳を休み安静にしていた

シャワーを浴び

18時の授乳中また胃痛

夕食も食べられなくなった

夜中の授乳をやめて眠ることにした

出産の疲れ

気持ちの高ぶりと授乳での睡眠不足

母乳を出したいと無理に沢山食べたこと

母になったプレッシャー

なかなか寝つけず 

やっと朝方3時間ほど眠った


夢を見た

ひとつめ・・・人からもらった

いろいろな鳥の卵を温めていた

親だと認識されたかったが

しかし知らないうちに産まれてしまう

1羽はダチョウのように大きな白い鳥

他数羽はガチョウ

スーパーマーケットに逃げ込まれ

追いかけてもつかまらないので

なんとか餌でつろうとしていた


ふたつめ・・寺の白い砂山を登ると

一歩ごとにさらさらと

足元の砂が崩れていく

頂上には埋め尽くすほどの

カップルが座っていて

私もその場に座りこむ

皆は向かいにそびえる山に祈っている

その山をぼんやりながめていたら

ドーンと大きな打ち上げ花火が上がり

花火大会がはじまった



「乳房マッサージ」

採血・検尿・体重測定

妊娠中に14㎏体重は増加し

出産で8.5キロ減った

あと5.5キロ 減ったとしても

この変わり果てたおなかは・・・・


昼前 NICUでは

陸が保育器から出され

海の横でうつぶせに眠っていた

まだ顔色は白っぽく

体温がすぐ下がってしまうので

ベッドの上にヒーターがつけられている

ふたりとも左手の甲につけられていた

点滴のチューブが外された

少しずつしっかりしてくる


陸 2370g(112g減少)

海 2340g(42g減少)

産後1割程度体重は減少し

そこから徐々に増えていく

15時 陸に初めて授乳

上手に吸ってくれ嬉しい

17時半 海に授乳

初めてオムツを換える

水を含ませた脱脂綿でおしりを拭き

オムツをはかせる

新生児用の小さな紙オムツだが


それでもブカブカで 前を折り曲げ

両端のテープが重なるようにとめる

服を着せたまま重さを計り

乳首を脱脂綿で清潔にし 含ませる

また重さを計り飲んだ母乳の量を記録

足りない分

看護師からミルクをもらい飲ませる

母乳とミルクの量を看護師さんへ報告し

オムツを交換する

一回の授乳に1時間近くかかってしまう

40分ぐらいで終えるようにと

指示を受ける

産後4日 母乳量0グラム


産後当日から毎日 

看護師が乳房のマッサージを

してくれている

恥ずかしかったが 次第に慣れ

自分の乳房が道具のように思えてくる

片方ずつ乳房全体を

両手の平で円を描くように動かされ

次に乳輪から乳首に向かい

指先で絞りだされるのだが

これが泣きそうになるほど痛い

何か恨みでもあるのかと思うほどだ

乳腺を開通させるために

指先の位置を徐々に変えてつまむ

暇なときや授乳時間が近づくと

自分でもするのだが何も出ない

それが看護師の手にかかると

母乳が細い線になってピューッと出る

職人技だ



「赤ちゃんたち」

産後5日目

毎朝5時 廊下から賑やかな赤ちゃんたちの

泣き声が聞こえてくる

新生児室の赤ちゃんたちが

一台のストレッチャーに並べられ

運ばれて来るのだ

母親たちはその声で目覚めて

それぞれの部屋で授乳する

日中はキャスターが付いている

プラスチックのベッドごと

ゴロゴロ自分たちで運んで来る

ベッドの下には オムツや脱脂綿

赤ちゃんの授乳やオムツ変えなどの

量や時間を記入するボードが

入るようになっている

基本的には母子同室が推奨されており

退院前までには夜間の同室も勧められる

陸と海はNICUに入院しているので

朝の仲間には入れない

授乳で体力をかなり消耗するそうで

日中は陸に授乳し

できるだけ夜は眠らせてあげ 

夜間は海に授乳することになった


当時 NICUには生死をさまようほど

重体の赤ちゃんはいなかった

双子が二組と 低体重児が数名

陸の体調には問題があったが

双子にしてはふたりとも大きく産まれた

双子は各々2000g以下で産まれ

ふたりの体重に差があることが多いと聞いた

帝王切開ではなく普通に産めたことも

ふたりそろって大きいことも

珍しいとのこと

もう一組の双子は 陸・海の数日前に

帝王切開で産まれた男の子

ベッドの子は2000g以上あり

一方は1800gで保育器にいた

痛々しいほど小さく

吸っている哺乳瓶がやけに大きく見える

赤ちゃんの体重が2300g以上ないと

退院の許可は出ない

この子たちの母親は先に退院していった

赤ちゃんが入院している間

母親は家で母乳を絞り 冷凍し 運ぶ

病院には朝8時ごろ来て

3時間ごとに授乳する

合間は待合室で待機し

15時頃までいるそうだ

2300gになるには

どれくらいかかるのだろう

陸・海は既に2300g以上あったが

陸の退院は何日か後になるだろうと

小児科の医師から言われた

青空通信

双子の子育てや離婚、自分の成長、 他の方々から頂いた言葉、 出会った言葉を綴っています。

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